剣盾エクストラの軌跡 ~S1-S1+~
posted by ししゃも
みなさんこんにちは、ししゃもですよ。
今年度から大きく人口の増えたエクストラレギュレーション。ししゃもの所属しているグループではずっとエクストラに集中して取り組んできました。
しかし次回のCLでは実施されない可能性が高いので、エクストラの研究はひと区切り。
最後のシティリーグに向けてどのように考察してきたのか、どのようなデッキ選択をしたのかを3回に分けて掲載します。
興味のある方はぜひご覧ください。
CL愛知
剣盾シリーズ最初のエクストラの大会であるCL愛知。開催前の考察では「ラボネク、レシゼク三神三鳥、カビゴン」が強力で、エクストラを研究しているグループは何か新規デッキを持ち込んでくるかもしれない、と予想していました。
詳しくは前回の記事(CL愛知 エクストラレギュ環境考察)をご覧ください。
そして当日大きな活躍をしたデッキは2つ。オロヨノとヤミラミLOです。まずはこの2つがどんなデッキだったのかを見ていきましょう。
オロヨノ
自分がこのデッキを最初に認識したのは10月。剣盾発売前、シティリーグシーズン1の千葉であぽろさんが使用していたのを見たときです。
ミロカロスの特性エナジーグレイスでオロヨノにエネルギーを付けながら、エリートトレーナー+ナイトウォッチャーで攻め込んでいきます。
先攻なら2ターン目にコンボを決め、後攻ならホラーハウスGXを使用することで相手が自由に動けるのは最初の1ターンのみ。その後は手札が1枚になり、さらに特性まで止められてしまえば何もできずに終わる可能性が高いという凶悪なデッキです。
惜しくもベスト8には入らなかったのでリストこそ公開されませんでしたが、エクストラバトル等でもそこそこの勝率を誇っていたようです。
そして、剣盾シリーズ開始でこのデッキは2つの大きな強化を受けます。「先攻サポートの禁止」と「クイックボールの登場」です。
ミロカロス+エリートトレーナーを使用する都合上、コンボが決まるのは最速でも2ターン目。1ターンは自由に動かれてしまい、そこで盤面を作られるとハンデスしても勝ち切れないのが弱点の1つでした。
しかし「先攻サポートの禁止」によってこの弱点が緩和。相手が先攻の場合、サポートを使えないので十分に展開しきることが難しくなりました。
もう1つの強化要素が「クイックボールの登場」。このデッキは2ターン目までに必要なカードが多く、揃えるためにはシェイミEXやデデンネGXで大量にドローすることが重要です。クイックボールによってそれらのポケモンに繋がるカードが増えたことでデッキの安定性が大幅に上がりました。
肝心のデッキ相性はどうだったのでしょうか。このデッキの性質上、「手札が無くても盤面だけで戦えるデッキ」には苦戦するものの、「毎ターン手札からエネやポケモンを出さなければ攻撃できないデッキ」には圧倒的に有利です。
事前のTierランクから見るとTier1のレシゼク三神三鳥には微不利~微有利、ゲコゾロには色相性もあって不利。しかしそれ以外の全てのデッキに対しては有利を取ることができます。
ししゃものグループが持ち込んだ「ずるのこうしん(https://note.com/bbd846/n/n0d1cb6c89990)」もオロヨノに対しては不利で、偶然とはいえここのデッキ相性もオロヨノ躍進の一因だったと分析しています。
CL愛知上位のオロヨノの中にもいくつか違いがあり、「ソーナンスを採用しているかどうか」と「アローラベトベトンかダストダスか」の2点が大きな分岐点です。
ソーナンスの役割は1ターン目。自分が先攻だと、相手に1ターンはサポを使って自由に動くターンを与えてしまいます。そこでソーナンスを前に出しておくことで相手のセットアップ等を封じることができ、特に対レシゼクやオロヨノミラーで大きな力を発揮します。
ただし自分のソーナンスをバトル場からどかすためにあかつきネクロズマも採用する必要があり、デッキスペースが窮屈になります。
アローラベトベトンとダストダスの違いは特性を止められる範囲。アローラベトベトンはたねポケモンの特性のみを止めますが、ダストダスは進化ポケモンの特性も止めることができます。
進化ポケモンの特性を止めることで特に大きな影響があるのは対ゾロアークと対カビゴンチラチーノです。これらのデッキにトップ解決される可能性を下げることで勝率が大きく変化します。
しかしダストダスには弱点もあります。かるいしを貼らなければ特性を止められないこと、そして自分のミロカロスの特性も止まってしまうことです。
なのでダストダスを使うにはかるいしやフィールドブロアーを多めに採用する必要があり、こちらもデッキスペースを圧迫してしまいます。
オロヨノについてより詳しい解説はひよポケのnoteをご覧ください。
オロヨノミロカロス+ソーナンスネクロズマ暁の翼 – note
ヤミラミLO
こちらのデッキの初出も剣盾前。11月の大阪シティリーグでB兄さんが使用し、ベスト8に入賞しています。
クラッシュハンマーやフレア団のしたっぱ等で相手の動きを止め、最後にはロケット団の工作やジュジュベ&ハチクマンを使用してLibraryOut(山札切れ)での勝利を狙います。
相手のデッキによって「エネルギーを割り切る」もしくは「攻撃できないポケモン(ダストダス等)をバトル場に縛り付ける」のどちらか、あるいは両方を組み合わせて戦うことが多いです。
ヤミラミLOというデッキ自体は10年近く前から存在するアーキタイプですが、ピッピ人形の登場によってトロピカルビーチとの組み合わせが強力な選択肢として浮上。みがわりロボとも合わせることができ、ジャンクハント以外にも手札を整える手段を得たことでデッキパワーが大幅に上昇しました。
制限時間のルールやトロピカルビーチの入手難度の高さからあまり注目されていませんでしたが、CL愛知では優勝したもっきーさんのグループ等で数人が使用しています。
事前のTierランクにあるデッキの中ではガブギラオンバーン、モクナシラフレシア、アオギリカメックス、パーフェクションに不利を取るもののその他の全デッキに有利で、さらにオロヨノに対しても有利。ピッピ人形による時間稼ぎとトップ解決札の多さにより、ハンデスされても十二分に戦うことができます。
またLO系統のデッキ全てに共通することですが、サイドの取り合いをするデッキを相手にするときとは違うプレイングを要求されます。そのため対LOの練習をしたことがない場合はデッキ相性以上に苦しい戦いを強いられることになり、世間に認知されていないタイミングなら本来不利なマッチでも勝ちやすい状況が生まれるのです。
これらの要因が重なり、CL愛知では見事優勝となりました。
ヤミラミLOについてより詳しい解説はkumeさんのnoteをご覧ください。
12月シティ
エクストラのシティリーグは毎月1回、各地のポケモンセンターで同時に開催されます。12月分の開催はCL愛知の1週間後。オロヨノとヤミラミLOという強力なデッキと1週間で向き合う必要がありました。
ヤミラミLOはトロピカルビーチが必要で、プレイヤーズセレモニーやロトムじてんしゃで代用しようとすると途端にオロヨノに勝てなくなります。
トロピカルビーチは2011年と2012年の世界大会の参加賞。流通量は限られており使用者も限定されます。
そのため「ヤミラミLOが強いのは間違いないが、どこまで対策するのか?」というのも参加者の課題の1つでした。
一方でオロヨノについては比較的入手難度の低いカードでデッキが作られています。対戦相手がいなくても1人である程度練習できることもあり、こちらは使用者が多くなる可能性もありました。
実際にシティリーグ大阪の上位にヤミラミLOはおらず、ベスト8のうち3つがオロヨノという結果となりました。
シティリーグ千葉ではヤミラミLOの使用者もいましたが、同時に「ヤミラミLOに強いオロヨノ」も登場します。
それがピーエムさんの使用した特性もりののろいのオーロットでグッズロックをしてヤミラミLOと戦う形。ミロカロスでメタモン◇にエネを付けてオーロットに進化し、エリートトレーナーを打ち込みながらウッドスラムで戦います。
グッズロックによってピッピ人形、クラッシュハンマー、バトルサーチャー、時のパズルといったデッキの核となっているカードを封じることができ、ウッドスラムも前のヤミラミを殴りながらベンチに予め置かれているピッピ人形等を減らしていけるのでかなり有利を取ることができるのです。
実際にヤミラミLOを倒してベスト4に進出しますが、そのオロヨノを打ち破ったのがヒサシの使用した「しあわせラボネク」。しあわせタマゴの採用によって対オロヨノ性能を引き上げたラボネクです。
フィールドブロアーが入っているオロヨノにも微有利、ミラーに強く増えると予想されていたオロヨノにはフィールドブロアーが入りづらいので圧倒的に有利を取ることができます。
「もりののろい入りオロヨノ」と「しあわせラボネク」の2デッキの登場は1月シティにも影響を与えていきます。
1月シティ
1月のエクストラシティは12月シティの3週間後。前回の結果を受けてある程度考察が進んでからの開催です。
1月の千葉のシティリーグで注目すべきデッキは2つ。1つ目はかえるさんの使用していた三神ゲコゾロです。
ゲコゾロはオロヨノに明確に有利を取れる数少ないデッキの1つ。かえるさんのゲコゾロはそこに2枚のカードを追加してヤミラミLOにも有利を取れるようになっていました。
追加したカードは「特性やみのころものダークライEX」と「特性エナジーキーパーのメレシー」。
ダークライEXは悪エネルギーの付いているポケモンのにげるために必要なエネルギーをなくす特性を持っており、ヤミラミLOの勝ち筋の1つである「逃げエネの重いポケモンを縛って攻撃できなくさせる」という戦術を潰すことができます。
ワザのナイトスピアも強力。前のヤミラミを倒しながらベンチにも30ダメージ。ピッピ人形も倒すことができます。
メレシーは特性エナジーキーパーでエネ破壊を防ぐことができます。クラッシュハンマーもフレア団のしたっぱも効かなくなるので、エネを壊されて攻撃できないということが無くなります。
千葉シティリーグで登場したデッキでもう1つ重要なのがomasaの使用したミミッキュLO。ヤミラミLOの派生形ですが、メインポケモンをミミッキュに寄せた形です。
ミミッキュはなりすますというワザの効果で手札のサポートを使うことができます。ブルーの探索で持ってきたサポートをワザでそのまま使ったり、フレア団のしたっぱを1ターンに2回使うといった戦術を取ることが可能。
ワザを使うために必要なエネルギーも無色1なのでリサイクルエネを使用でき、2匹目3匹目も使いやすくなっています。
序盤の展開力や対グッズロック性能が大幅に高まっており、あくのいましめのフーパ採用により先月登場したもりののろい入りオロヨノにも対応可能。対ヤミラミLOでも有利で、決勝トーナメントではヤミラミLOミラーを2回制して見事優勝しています。
ミミッキュ+ヤミラミLO デッキガイドと思考の過程 – note
この月は大阪大会でも1つ重要なデッキが登場しました。それがむらたむらさんの使用したモクナシラフレシアです。
後攻1ターン目からスーパーグロウで特性イライラかふんのラフレシアを立てることができ、グッズロックで妨害できるのが強み。さらに次のターンのスーパーグロウでゴリランダーを立てることで素早くエネルギーを供給して攻撃に移ることもできます。
このデッキは以前からそこそこ使われていたものの、まともなデッキリストが公開されておらず完成度が低いままでした。むらたむらさんのリストはそれまでのものと比べて無駄が少なく綺麗なものに仕上がっており、対ヤミラミLO性能も高いので環境に影響を与えそうでした。
2月シティに向けて
1月シティ終了時点での環境認識は以下の通り。
Tier0
ヤミラミ/ミミッキュLO
Tier1
オロヨノ
しあわせラボネク
レシゼク三神三鳥
Tier2
モクナシラフレシア
ゲコゾロ
ゾロアークゲロゲラッタ
トップデッキは文句なしにヤミラミ/ミミッキュLO。このデッキに自然に勝てるのはモクナシラフレシアくらいで、その他のデッキにはほぼ有利を取ることができます。ただしトロピカルビーチの入手難度という問題があり、実際に当たるかどうかは参加場所次第といったところ。
その下に着くのはオロヨノ、しあわせラボネク、レシゼク三神三鳥の3つ。
オロヨノは上位の中で明確に有利を取れるデッキがモクナシラフレシアくらいですが、逆に大きく不利を取るのもゲコゾロくらい。プレイ方針もシンプルで練習相手がいなくても使えることもあり、無視できないデッキです。
しあわせラボネクはヤミラミ/ミミッキュLOに不利なものの、その他のデッキには互角~有利。サイレントラボ+マリィによるイージーウィンもあります。
レシゼク三神三鳥は構築次第でヤミラミ/ミミッキュLOを含めたすべてのデッキに互角以上に戦えます。明確に有利を取れるのはホウオウ採用時の対モクナシラフレシアとNの覚悟採用時の対ゲコゾロくらいですが、その他のデッキにも十分対抗できる性能を持っています。
Tier2はモクナシラフレシア、ゲコゾロ、ゾロアークゲロゲラッタの3種類。
モクナシラフレシアはヤミラミ/ミミッキュLOに有利を取れる数少ないデッキですが、オロヨノとレシゼク三神三鳥に不利。しあわせラボネク、ゲコゾロ、ゾロアークゲロゲラッタには構築次第ですが互角程度です。
ゲコゾロはオロヨノに明確に有利な唯一のデッキ。かえるさんのような構築にすればヤミラミ/ミミッキュLOにも有利ですが、対ラボネクに課題が残ります。
ゾロアークゲロゲラッタは綺麗に回ればミミッキュLO以外の全てのデッキに勝つことができます。ただしブルブルパンチが有効でない対ミミッキュLOで不利なのと、しっかり進化できずに負けてしまう試合も多く安定性に欠けます。
2月のシティリーグに向け、上記の中から可能な限り多くのデッキに勝てる必要があるという認識で調整をおこなっていました。
実際にどのようなデッキ選択をしたのかは次回以降の記事をお待ちください。
ここまで読んでくださりありがとうございました。