【 ポケモンカード エクストラシーズン3】
Black Rabbitができるまで ~S1-S1+~
builder ユリガタ
posted by ししゃも
0.はじめに
はじめまして、またはお久しぶりです。今シーズンからポケモンカードに復帰し、縁あってししゃも城で練習させてもらっているユリガタです。現在はMTGとポケモンカードの二足の草鞋でカードゲームを楽しんでいます。
今回、ししゃも城のメンバーの半数がシティリーグシーズン3エクストラで使用したデッキ【Black Rabbit】の戦績は以下の通りです。
ポケモンセンターメガトウキョー 準優勝/ベスト4
ポケモンセンタートウキョーベイ ベスト8
ポケモンセンターナゴヤ ベスト8
この記事ではBlack Rabbitについて、デッキ製作の過程を用いて解説していこうと思います。僕はカードゲームを数値で考えることが得意ではなく、基本的にふわふわした考えを持っていますのでこの記事もふわふわした内容になるかと思いますがご容赦ください。
1.デッキの考え方
突然ですが、勝てるデッキを作るにはどうすればいいのでしょうか?当然この問いに正解などないのですが、経験則から来るイメージが自分の中にはあります。
まず、勝てるデッキは環境の初期と中~終期(長いので以後後期とします)で違うということです。環境の初期は対戦相手が握っているデッキの予想(特に細部)が難しく、環境の後期はその逆です。ここでいう「環境の初期」とはプールに新しいカードが追加されてから大型大会が1回終わるまで、つまり実際に勝ったデッキリストが出回るまでと定義します。「環境の後期」はそれ以降のこと、俗にいう「メタが固まった後」のこととします。
一般に、環境の初期では高いカードパワーを押し付けるか相手の都合に振り回されない決まったハメパターンがあるデッキが強く、後期では予想される相手のデッキの動きを崩しやすいか対戦相手のデッキのスキを突くデッキが強いです。
具体的には、単純に強いカードを押し付けるレシゼクや、相手がどんなポケモンを使ってきてもサイドレースが有利になるずるのこうしん、先行2ターン目で相手のハンドを1枚にするオロヨノは前者のタイプのデッキとなります。
逆に環境に存在するデッキに合わせて採用カードを決め、相手のリソースを枯らすヤミラミ/ミミッキュLOは後者のタイプのデッキと言えるでしょう。
CL愛知エクストラBEST16【ずるのこうしん】 – note
オロヨノミロカロス+ソーナンスネクロズマ暁の翼 – note
ミミッキュ+ヤミラミLO デッキガイドと思考の過程 – note
シティリーグシーズン3エクストラの環境は、前回の環境からパックが1つしか追加されず、かつそのパックがエクストラに与える影響は小さいと予想されました。そのため、今回は後者のデッキパターンが強いと考えデッキ制作に取り掛かりました。
2.環境に存在するデッキのスキを突く
では実際に環境にいるデッキのスキを突くにはどうすればいいでしょうか。答えは単純で、自分でそのデッキを使ってみるしかありません。使われるのではだめです。使ってみてどのように勝つのか、どのように負けるのかを実際に経験してください。
今回ししゃも城では下記記事のtier1までの4デッキを主な仮想敵としました。
それぞれのデッキを回してみて感じた特徴を書き並べていきます。
〇ヤミラミ/ミミッキュLO
・勝ちパターンは主に2つ。
・1つ目はフレア団のしたっぱ、ザオボー、カウンターキャッチャーの逃げエネ要求によってエネルギーを枯渇させることにより相手のデッキを機能不全にさせるパターン。
・2つ目は、相手が恒久的に攻撃するために自ら掘り進めたデッキをロケット団の工作、ジュジュべ&ハチクマンの連打で削り切るパターン。
・序盤の展開はトロピカルビーチを使うかミミッキュを用いたブルーの探索⇒アズサによるベンチの用意。ミミッキュLOでは従来のヤミラミLOよりも展開速度が上がっている。
・ミミッキュの採用、ヤミラミの枚数減少によりクラッシュハンマーを採用しづらく、フレア団のしたっぱでしか基本エネルギーをトラッシュできない。
・そのため、基本エネルギーが多くかつ基本エネルギーのみで攻撃できるポケモンが採用されているデッキが苦手。
・採用しているポケモンのHPが低く、ベンチにダメージを与えるポケモンも厳しい。
〇オロヨノ
・理想の動きは先行1ターン目にバトル場にソーナンス、ベンチにヒンバス、アローラベトベターを用意すること。2ターン目にソーナンスを逃がす準備も必要。
・2ターン目にはミロカロスの特性を使いオロヨノを加速、エリートトレーナー+ナイトウォッチャーで相手の手札が1枚になる。その際アローラベトベトンがベンチにいるとさらに相手の復帰が困難になる。
・上記の動きを完結させるために、スカイフィールドとシェイミEXやデデンネGXを併せて1ターンにたくさんのカードを引くシステムを採用している。
・デッキの中のほとんどがコンボギミックのためのカードであり、ハンデスを通しても勝てない=ハンドを枯らされる前に場を完成することができるデッキに対応することが困難。
〇しあわせラボネク
・オロヨノに対する強力なメタであるしあわせタマゴを一番強く使えるデッキ。
・EX,GX,Vがデッキに入っていないためサイドレースで優位に立ちやすい。
・お互いの特性を止めながら毎ターン安定して170ダメージをたたき出し、ついでに相手のエネルギーを1枚トラッシュする。なんで?
・ダブルドラゴンエネルギー以外のエネルギーがデッキに入っていないためザオボーに非常に弱い。
・しあわせたまごを3から4枚採用しているため、打点を向上するグッズが採用されていないことが多い。現在の環境では採用する具体的な理由もあまりない。
〇レシゼク三神三鳥
・高いHPと打点で場を制圧するTheカードパワーデッキ。
・現在はホウオウEXを採用する形とピーピーマックスを使う形の2パターンが存在する。両立するタイプも存在するが、その場合三神とダブルドラゴンエネルギーは採用されない。
・オロヨノ同様、場の完成を早めるためにスカイフィールド・シェイミEX・デデンネGXを用いて1ターンにたくさんのカードを引けるように組まれている。
・ホウオウEX型は序盤から高火力を出しやすいが、ベンチの必要枚数が非常に多く、序盤だけでなく終盤まで常にウソッキーと混沌のうねりに苦しめられる。
・ピーピーマックス型では序盤からレシゼクが270ダメージを連打することが難しい。
ここまで長々と書き並べましたが、上位デッキ4つのうちの半分はスカイフィールド・シェイミEX・デデンネGXの組み合わせを採用していることがわかります。
そこで、このシステムに対してワンチャンスありそうなメガミミロップ&プリンGX(以下ロップリン)について考察してみることにしました。
3.ロップリンについて
恐るべきダメージ倍率で、一時期のスタンダードレギュレーションでは猛威を振るっていたパワーカード。エクストラレギュレーションではほとんど使用されていないことが不思議かもしれませんが、そこには2つの背景があります。
1つは、ニコタマを用いたビートダウンデッキの不在です。その代表格であったゾロアークGX系統は先攻サポート禁止により大幅に弱体化されてしまい、無理なくロップリンを採用できるデッキが環境に存在しないに等しいのです。ダブルドラゴンエネルギーが強すぎることも、深層心理で影響していたかもしれません。同じ特殊エネルギーを中心に据えるリスクを背負うのであれば、よりパワーの高いダブドラに着目するのは自然なことです。
2つ目はウソッキーの存在です。わざわざロップリンが殴れる構築を組まなくてもウソッキーを1枚ベンチに置くだけでシェイミEXの連打を防ぐことができ、オロヨノやレシゼクの動きは大きく制限されます。非GXであり、どのデッキにも入れやすいことから「ベンチを多く展開するデッキに対しての対策カード」としてはウソッキーがメジャーでした。相手のベンチを狭める特性のため、当然ロップリンとはアンチシナジーになります。
以上の理由で、エクストラにおけるロップリンはほとんど研究されないまま現在に至っていました。
しかし、2つ目の理由であるウソッキーは後攻では役に立たない場合も多く、展開された後でも活躍できるロップリンにはまだまだ研究の余地があると考えました。
初めに、ロップリンをメインに据えるためにはニコタマとピーピーマックスは必須だろうと考えました。ニコタマだけで完結するようなシンプルで強力なデッキがあれば、すでに誰かが思いついているはずだからです。基本エネルギーと組み合わせるにあたり浮上したのが、溶接工でも加速が可能な炎タイプのデッキでした。しかし、個々のカードパワーがそこまで高くなく、大会での使用に耐えうるデッキにはなりませんでした。
この時は炎以上に相性の良いタイプが思いつかず、ロップリンの研究は一旦打ち切りとなってしまいました。
4.天啓を得る
話は変わって、ほぼ同じタイミングでomasaが悪デッキのゲッコウガ&ゾロアークGX(以下ゲコゾロ)の弱さに気づき、ゲコゾロ抜きの悪デッキを考えていました。というのもテンプレの悪デッキでTAGチームのデッキと対戦する場合、
「デッドエンドGXで前のポケモンを倒す⇒前のダークライGXが倒され場の悪エネルギーが2~3枚減る⇒ゲコゾロのダメージが減りそのまま押し切られる」
という試合展開がよく起こり、ゲコゾロとダークライGXの組み合わせは思っていた以上にシビアな立ち回りを要求されることがわかったのです。
デッドエンドGXが対TAGチームで有用なことは間違いなかったので、ダークライGXは残したまま新たな相方を探すことに。そこで目を付けたのがアクジキング(レッドバイキング)でした。相手がTAGチームとシェイミEXを置いたが最後、サイドを3-3で取り切るというコンセプトのデッキでした。
しかしこれまた理想通りにはいかず、三神にオルタージェネシスGXを打たれるとサイドレースが逆転してコンセプトが崩壊してしまうことがわかりました。このデッキもダメかと思っていた時にあることに気づきます。
ニコタマとピーピーマックスが入っている…!
ロップリン+ダークライGX+アクジキング軸デッキの構築がスタートしました。
5.デッキを肉付けしていこう
ロップリン、ダークライGX、アクジキングを軸に、環境の上位デッキに対してのプランを考えます。
〇対レシゼク三神三鳥
・ロップリンかダークライGXで前に出てきたTAGチームを倒す。
・ベンチのシェイミEXをアクジキングで倒す。
・上の2つを組み合わせ、2回の攻撃でサイドを取り切る。
〇対オロヨノ
・1ターン目にロップリンかダークライGX(ハチマキorまわし付き)を完成させ、手札を減らすために前に出てくるオロヨノをワンパンできるようにしておく。
〇対ウルネク
・前述の通り現在のウルネクはしあわせタマゴ型が主流のため、HP180のダークライGXを使うとサイドレースが互角となる。
・1回でもアクジキングで攻撃することができればサイドレースがひっくり返る。
・1試合で最低2回はリザレクションを使う必要があり、フィールドブロアーを2枚以上採用しなければならない。
ここで問題となるのが対ヤミラミ/ミミッキュLOですが、これはししゃもの記事にも記載のあったダークライEXを採用することで劇的に改善しました。ダークライEXはバトル場のポケモンを倒しながらベンチのピッピ人形も倒すことができ、LO側の理想とする時間稼ぎを許しません。さらに特性「やみのころも」によりすべての悪エネルギーがフィールドブロアーに割られないかるいしとなり、カウンターキャッチャーによる妨害も苦としないスーパーカードでした。
以上より採用するポケモンが決定し、デッキの核が完成しました。
デッキコード:LngPgg-zmnaER-nQLNQg
6.やっぱりゲコゾロは必要だ
上のデッキを使い身内で練習したり、エクストラバトルの日で実践投入したりしていく中で問題点が見つかりました。対オロヨノでは1ターン目にロップリンかダークライGXを完成させるとしていましたが、これは対策になっていなかったのです。
しあわせラボネクの増加により、オロヨノが複数枚のフィールドブロアーを採用し始めたことが原因でした。一度場に出たシェイミEXやデデンネGXがスカイフィールドを割ることによりトラッシュへ送られてしまい、ロップリンの打点は削がれてしまいます。同じくフィールドブロアーによりダークライGXについている道具も割られてしまうため、オロヨノを倒すことは困難でした。
そこで、一度見限ったゲコゾロが再び日の目を見ることになりました。ゲコゾロであれば、自陣のエネルギーの枚数のみを条件にオロヨノを一撃で処理することができるためフィールドブロアーに屈することはありません。またゲコゾロは打点の低いポケモンとの殴り合いでは非常に強く、想定外のデッキと当たった際のアタッカーの選択肢としても高評価でした。
これらの過程を経て、最終的に以下のようなリストが完成しました。
使用デッキ:【Black Rabbit】
・メガトウキョー準優勝(マサヤ)、トウキョーベイベスト8(ヒサシ)
デッキコード:FkFfFF-R1hcAK-wFFfvd
・メガトウキョーベスト4(ぽけむら)
デッキコード:FFFFfk-RJ6Hlz-fVkFFb
・ナゴヤベスト8(やしろ)
デッキコード:fkkFkk-ukGZ3T-FF1FbF
7.最後に
デッキが完成するまでの過程をたどることで自ずとそれぞれのカードの採用理由もわかってくると思い、今回このような形式で記事を書いてみました。
ししゃも城ではヤミラミ/ミミッキュLOの評価が非常に高く、正直今回の環境においてこれに勝てるデッキは存在しないのではないかと思っていた時期もありました。ヤミラミ/ミミッキュLOはそのくらい完璧なデッキでした。それでもこうして、新しく強いデッキは生まれました。
もうエクストラの大会はほとんど無いかもしれませんが、この記事が今後のポケカライフの助けになれば幸いです。
最後に、ポケモンセンタートウキョーベイ優勝のデッキを紹介して終わります。ししゃも城メンバーのまだないが使用したデッキです。
・トウキョーベイ優勝(まだない)
デッキコード:ccDaa8-3q2N31-Dc8ccx
いやロップリン入ってないやん!!!勝ったみんなおめでとう!